代官山ってどんな街?
代官山ってどんな街?
海外ブランドのコンセプトやこだわりを伝える特集。記念すべき初回は、ベビービョルン株式会社へ訪問し、ベビービョルン代表の深井さんへ、インタビューしてきました!
第二回目となる今回は、ベビービョルンの抱っこ紐について、その知られざる魅力やコンセプトをお伝えします!
―――前回に引き続き、今回はビョルンの抱っこ紐についていろいろなお話をおうかがいできたらと思います。抱っこ紐が発売されたのは、いつのことですか?
深井さん:バウンサーを発売し、ベビーブランドとしての地位を得た夫妻はある日、ストックホルムのベビー用品店である商品を発見します。それが、「kodomo」という日本製のおんぶ紐。
まだこのころは抱っこ紐の文化がなかったのですが、ヤコブソン氏はすぐさま「これだ!」と思ったんでしょうね。そこから抱っこ紐の開発がスタートします。これが、1970年くらいのことです。
―――抱っこ紐の着想が、日本のおんぶ紐だったということに驚きました!
深井さん:しかし、当時北欧には背中に背負うという文化がなかった。ビョルンの抱っこ紐は「ボンディング=絆作り」というコンセプトでスタートします。小さな赤ちゃんをハートの近くで抱っこして、安心させる、肌で絆を感じるというのがビョルンの抱っこ紐の、開発当初からの想いです。
抱っこ紐は、日本などではどうしても移動の道具で、モビリティが重視されがち。しかしビョルンは、赤ちゃんが生まれて右も左もわからない状態から、「いつも誰かがそばにいてくれる」「その人を好きになる」「親子の絆がうまれる」という、他人から親子になっていくそのプロセスを大事にしており、抱っこ紐はそれをサポートする絆作りのアイテムととらえています。
―――新生児向けの抱っこ紐というと、まずはビョルンのオリジナルが思い浮かびます。オリジナルは特にそのコンセプトに特に沿ったアイテムなのですね。
深井さん:その通りですね。確かに、ビョルンの抱っこ紐はよく「小さなとき向け」と言われます。ビョルンのアイテムは抱っこ紐のラインナップはすべて、もともと赤ちゃんが小さな時期(新生児~4、5か月くらい)に合わせて作られています。成長して大きくなったら、それに応じて伸ばしていく、という構造です。そのため、小さなときに補助する部品をつける、トランスフォーム型の抱っこ紐は発売していません。
いつも抱きしめて、愛情をかけてあげる。赤ちゃんとのはじめての絆作りに大切な4~5ヶ月の期間を、快適に、安全に使えるのです。大きくなると使えなくなる…との声があるのが確かですが、その小さな期間に特にベストな抱っこ紐ということで、今でもオリジナルが売れ続けています。
―――私自身もオリジナルを使っていたのですが、はじめての子どもを産んで育児で苦労していることが多いなか、この抱っこ紐にはたくさんのシーンで救われました。ぴったりフィットするので安心感があるのか、どんなに泣いていてもビョルンで抱っこすると落ち着いてくれる。それに、何より、抱っこをする工程がシンプルでラク。装着ストレスがないビョルンのバックルについては、「これ以上の発明はない!」と、日々感動していました。
深井さん:このバックルは、自社開発をしています。毎日使うママはもちろん、慣れていない人にも使いやすい構造でなければならない。バックルはすべての抱っこ紐に採用されていますが、なみなみならぬこだわりがあるのです。
ビョルンの抱っこ紐の装着シーンでの最も重要なルールは「赤ちゃんを抱っこしたあとは、片手しか使ってはいけない」ということ。
抱っこ紐を使用するとき、片方の手は必ず赤ちゃんに接していることが装着ルールです。数あるほかの抱っこ紐だと、ママの首の裏のバックルをつける際などに、どうしても両手を要してしまいます。
すべての装着動作を片手で行えること、かつダブルアクションで安全性に配慮を重ねています。
―――確かに、片手であけられて、片手で締められる。片手でスルッと装着できる動作ばかりですね。
深井さん:それと同時に、「取扱説明書を見なくても、誰でも正しくつけられる」、「真っ暗な状態でも正しくつけられる」このふたつを条件とした、シンプルな構造を心がけています。
実際、テスト装着では、抱っこ紐を普段使わないユーザーの方に何の説明もなく装着してもらいます。また、暗闇のなかでも感覚だけでつけられるのか、というテストもあります。
―――聞けば聞くほど、すごいアイテムだということがわかります。
深井さん:私が目を瞑って実践してみますね。暗闇でも感覚だけでつけられる、というのは、例えば間違った方向にバックルをさしてしまった場合、入らないようになっています。正しい方でしか、入らない設計になっているのです。
また、色覚の弱い方でも使えるように配慮されており、そのため左右が赤と青で色分けされているのです。これも、誰がみてもわかりやすい構造です。
―――バックルをはじめとするこういったデザインは、すべてビョルン独自のこだわりなんですね。
深井さん:世界的に有名な工業デザインのヴェリテと協力して、設計を行っています。人間工学デザインに長けていて、世界の車椅子や医療デザインを多く手がけている会社です。デザインは見た目だけでなく、機能的であり、どんな方でも使いやすいものでなければならないと考えています。
―――また、ビョルンの抱っこ紐と言ったら、「前向き抱っこ」も特徴のひとつだと思います。これも開発当初からの機能なのでしょうか。
深井さん:自我が芽生え始めた赤ちゃんは、外の世界が気になるようになります。生後6か月くらいになると、好奇心が芽生えて何でもみたいと思うようになる。小児の整形外科医とも協働して、「前向き抱っこも大事なプロセス」とのコンセプトを持っています。
―――前向き抱っこでのお散歩は、街中で大人気ですよね! また、男性にも使いやすいシンプルでスタイリッシュなデザインだと思います。街中で抱っこをしているパパの半数以上は、ベビービョルン愛用者だと思うのですが…。
深井さん:ビョルンのデザインには、父親の育児参加の背景が深く関係しています。かつてスウェーデンでは1980年代から少子化傾向がありました。いまの日本と同じ状況ですね。
そこで、女性が働ける環境を作ろう、と、男性の育児休暇を半強制的にとらせる制度を作った。現在では9割以上の男性が育児休暇をとっており、男性の育児参加は欠かせないものとなっています。
そんな時代にデビューしたビョルンは、父親も使えるデザインでなければならなかった。ママがいないときにも使える、デザインと構造。これらの社会的な背景があって、ビョルンのブランドとしてのコンセプトが確立されてきたのです。
子供がいる生活って、幸せなもの。それをサポートするアイテムでありたいと、ビョルンはずっと願い続けているのです。
聞けば聞くほど素晴らしい、ベビービョルンの世界。次回は、ソフトスタイやお食事アイテム、トイレトレーニングアイテムなど、日本登場時に絶大な人気を得たプラスチック製品などについて、とことん解説します!